2023.12.28
バキリ、と。
カップの取っ手が割れた。
「……」
ヘスティアはぴたりと動きを止め、じっとその陶器を見下ろす。
テーブルに置かれた白色のマグカップがひとりでに壊れ、湾曲した取っ手が卓上に転がっている。
本体の方は無事で全壊こそしなかったが、白い欠片がバラバラとなって散っていた。
「……」
しばらく押し黙っていたヘスティアは、不自然に割れたカップから顔を上げ、キッチンを忙しく駆け回っているベルを見る。
何でも今日は早くからダンジョンにもぐる予定らしく、普段より余裕がないらしい。
既に冒険者用のインナーとパンツを身に付けているベルとマグカップを交互に見て、ヘスティアは、筆舌に尽くしがたい胸騒ぎに襲われた。
「じゃあ神様、後片付けはもうやっておきましたから!
「あ……ベル君!」
軽装の詰まったバックパックを持って出ていこうとするベルを、ヘスティアは咄嗟に呼び止めてしまった。
ベルは立ち止まり、不思議そうな顔を向けてくる。
ヘスティアは言葉に詰まった。まさか「嫌な予感がするから今日は行かないでくれ」などと言えない。自分でも何じゃそりゃあと思ってしまう。
しかし、この胸のざわめきを無視できないのも事実だった。凶報を告げるかのようにへし折れたカップをちらりと見て、ぐむむっと唸る。
「あ、あー……ほら、【ステイタス】を更新しておかないかい? ここ最近やってあげられなかっただろう?」
「ええっと……」
「なぁに、すぐ終わらせるよ。時間の心配はしなくていい。だから……ね?」
ヘスティア自身、自分でも戸惑っているような笑みを浮かべていた。必死になり過ぎではないかという。
ベルはそんなヘスティアの様子には気付かず、笑みを浮かべて彼女の提案を呑んだ。
ヘスティアは破損したマグカップを放置し、手早く【ステイタス】の更新に取りかかった。
「……ねえ、ベル君? あのパルゥム君とは上手くやっているかい?」
「神様……一週間前からずっと同じこと聞いてますよ?」
「そ、そうだったかいっ?」
黙っていると落ちつかなかったので言葉を探したが、ベルに苦笑されてしまった。
言葉の通り、ヘスティアがリリと会ってから既に一週間が経とうとしている。
諸事情によりベルとリリの二人だけのパーティタイムを危ぶむヘスティアは、何度も同じ質問を重ねてしまっていた。
ベルの上で赤くなり、こほんとわざとらしく咳をする。小さい手を動かしながら【
「あとさ、今更なんだけど……最近、何をしてるんだい? 『耐久』の熟練度の伸びが、他のアビリティを差し置いて凄まじいことになっているんだけど……」
「……は、はははっ」
何故そこで空笑いをするんだとヘスティアは思った。
師事できる人が見つかったと最近報告されたので、恐らくそれに起因しているのだろうと察してはいるのだが。
そして急いで【ステイタス】を更新していく内に、案の定というか、ヘスティアの機嫌は悪くなっていった。言わずもがな、【憧憬一途】のスキル効果のせいである。
ヘスティアは途轍もなく面白くなさそうな顔をしながら、前々から気になっていたことを聞いた。
「ベル君。ちょっと掘り返すようで悪いんだけど……例の【剣姫】君と何かあったり、した?」
ぶっっ、とベルは伏せた体勢で吹き出した。
げほげほと噎せながら、ヘスティアの眼下で耳を真っ赤にしている。
くそっヴァレン何某めっ……! とヘスティアは歯嚙みした。
ちょうど『魔法』が発現した辺りから、ベルの【ステイタス】の伸びが一段と顕著となったのだ。このベルの反応から見るに、何かしら接触を果たしたに違いないとヘスティアは確信する。
おのれぇ、と心の中でジェラシーをメラメラ燃やす。
「あ、あの、神様!? 【ステイタス】ってモンスターの戦闘以外でも強化されるものなんですか! その、対人戦闘とかでも!?」
逃げたな、と思いつつヘスティアはあえて言及しない。何故ならばヘスティアは大人だからである。見逃してやるくらいの器量はあるのだ。
おっと手が。ブスリ。
ベルがしくしくと泣き出した。知らん顔して説明を始める。
「ああ、強化されるよ。モンスターや人がどうたらというより、真っ当な【経験値】として君達の体に蓄積される……判断されるかがポイントなんだ。お遊びやただ機械的に作業しているだけじゃあ絶対に【経験値】として加算されないし、逆に訓練でも死闘なみに打ち込めたなら、確かな糧として【経験値】として認められるよ」
「それじゃあ……」
「しっかり実になったか、ならなかったか、ってところかな。色濃い
どちらかというとその言い回しは『スキル』を発現させる感覚に近かったが、特に訂正はしない。こう言った方がベルにはわかり易いだろう、と。
ややあって、全ての作業を終え【ステイタス】をじっくり俯瞰していると……ヘスティアは静かに、口端を痙攣させた。
「うわっ……。神様、ごめんなさいっ、僕もう行きます!」
時計を見たベルが血相を変えて体を起こす。
器用にヘスティアを脇にどかせ、そのまま荷物を持って扉へ直行した。
「べ、ベル君っ、ちょっと【ステイタス】が……!」
「ごめんなさい、帰ってから聞きます! いってきます!」
慌てた表情でベルは部屋を後にした。
取り残されたヘスティアは伸ばしかけていた腕を下げ、はぁ、と溜息をつく。
テーブルにあるマグカップを横目で見て、ベルが先程まで背中を向けていた場所を見つめて。
頭を抱えるように額へ手をやった後、ヘスティアはぽつりと呟いた。
「何だよ、SSって……」
オラリオ東方にそびえる山脈から、太陽が顔を覗かせようとしていた。
屋敷の最上階に近いこの部屋からは、都市をぐるりと囲む市壁を越えて輝く山々を見渡すことができる。四角い窓の外に広がるその景色に、少女は軽く目を細めた。
まだ浅い朝日を横に浴びながら、アイズは金の長髪をばっと後ろに流す。
細い身体は純白のスカートとシャツを纏い、その上に澄んだ蒼色の軽装が包み込んでいる。
膝まで保護するブーツは丸みを残しつつも鋭角的なフォルム。腰には唯一の武器であるサーベルが差し込まれていた。
腕の形にフィットした薄手の手甲の具合をカチャリと音をたてて確かめ、アイズは静かに前を向く。
姿見に映る完全装備。日の光を浴びて光沢を放つ蒼の鎧、銀の胸当て、金の髪。
【剣姫】と畏れられる少女の形をした“戦闘狂”が、アイズのことを真っ直ぐ見据えていた。
「おーい、アイズ、まだか? いつまで準備に時間をかけてんだよ、お前」
「……今、行きます」
扉の向こうのベートに返事をし、アイズは己の立ち姿から視線を切った。
アイズがLv.5になってからもう十日。今日は待ちに待ったダンジョン攻略当日。
【ロキ・ファミリア】の団員を結集させ深層を開拓する、『遠征』のイベントだ。
強くなり過ぎたアイズ・ヴァレンシュタインが、より“高み”へと進出することのできる、唯一に等しい絶好の機会。
「アイズ、早く行こうー! どっちがいっぱいモンスター狩るか競争しようねー!」
「うるせえなぁ……何でお前がここにいるんだよ、エルナ」
「それはこっちの台詞ぅ。負け犬は負け犬らしく尻尾巻いてどっか行っててよ!」
「犬じゃねえ、オオカミだっ! そもそも俺が何に負けたってんだ!」
「完膚無きまでフラれた癖にぃ! 『私は負け犬とだけはゴメンでーす!』ってさぁ! やーい!」
「ぐぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
派手に騒がしくなってきた扉の奥をマイペースに無視し、アイズは最後に一つ視線を飛ばす。
耳を叩いてくる音響。朝空に広がっていく金属の声音。
西の方角に見える長い鐘楼が、重々しく鳴き始めていた。
ちり、と首筋が疼いた。
「……」
「ベル様?」
僕は首に手をやりながら、ぐるっと周囲を見る。
木色をした壁面に背の低い草花が繁茂する広いフロア。9階層のルームで僕は怪訝な顔付きを隠せない。
すぐ横で顔を見上げてくるリリにも、言い訳をすることができなかった。
「何か気になることでも?」
「……いや、何て言うんだろ」
……視られている、のか?
僕自身煮え切らない、どこかにあるやもしれない“目”の存在。
敵意や害意は全く感じられないけど……漠然とした不安が、どうしてか肩の辺りにのしかかってくる。
今日はいよいよ10階層を突破しようということで、僕達は朝早くからダンジョンにやって来ていた。他の冒険者の数は極端に少ない。
ここまで来てすれ違ったのも、やたらと体格のいい獣人の冒険者だけだ。
追跡されてるなんてこと、普通はありうる筈ないんだけど……いよいよ気のせいでは片付けられなくなってきた。
「リリ、ここで装備を取り変えちゃっていいかな?」
「あ、は、はい」
いつもとは違う緊張を見せているせいか、リリは慌てて背に担いだプロテクターと《バゼラード》を渡してくる。
僕はバックパックに詰めてあったライトアーマーを装備し、万全の態勢を整えた。
慣れ親しんだ装備の感触に触れれば少しは楽になるかと思ったけど……眉間から皺が取り除けない。
嫌に、心臓が低く喚いている。
「ちょっと、おかしくない……?」
「おかしい、ですか?」
「モンスターの数が少なすぎる」
先程から気がかりだったことを口にする。
リリも「そういえば……」と元来た通路を振り返った。
9階層についてから、やけにダンジョンの中が静かだ。現在地は9階層の深部といっていい。10階層を目の前にしておきながらモンスターと一度も
精々ゴブリン達が逃げるように駆け回っていたのを、ちらりと見かけた程度だ。
(何だろう……すごく、気持ち悪い)
違和感が積み重なって、胃が軽く捻じれそうだった。
思い出したくない“何か”を無理矢理掘り起こされている感じ。
そう。
あの時も、ダンジョンはこんなにも静まり返っていて……。
僕はそこで頭を振った。
「ベ、ベル様?」
「……行こう。10階層に」
口元を押さえてかろうじて言う。
「
二つあるルームの出入り口のうち、10階層に繋がる方へ足を進めようとする――まさにその時。
―― さぁ、見せてみなさい? ――
えっ? と。
いきなり頭に直接響いてきた蠱惑的な声に、僕は目を見張る。
そして次には、
「――ヴ――ォ」
足が固まった。
「…………」
「い、今のは……?」
リリが何かを言っている。だけど頭に入らない。
何かが聞こえた。何かが、聞こえてきた。
脳裏に刻まれた“あの雄叫び”と酷似した音の欠片が、僕の神経という神経を焦がす。
「………………」
潤滑さを失った玩具のように、錆びついた動きで首を背後に巡らす。
音源の方角はちょうど僕達が通ってきた道からだ。あの一本の小径の向こうに、何かがいる。
気付けば僕の呼吸は乱れていた。指先が震えて力が入らない。
喉の代わりに頭が『嘘だ』とがなりたてている。そんなことがあるわけないと子供のように泣き叫んでいる。
リリが固唾を呑んで目を凝らす中、僕は、必死に何かを祈っていた。
そして、
「……ヴゥゥ」
現れやがった。
「――ぇ?」
「……」
予感は的中した。してしまった。
いや、そもそも、僕が“アイツ”の声を忘れる筈がないのだ。
何度夢に出てきたのかわからない。何度別のモンスターにそれの面影を重ねてきたのかわからない。
何度“アイツ”を怖がってきたのか、もう、数え切れない。
「オオオオォオオォオオォオォオオオ……ッッ!!」
ミノタウロス。
「な、なんで、9階層にミノタウロスが……」
僕が聞きたい。
ああ、でも僕は知っている。
このどうしようもない理不尽を知っている。
この言葉では語り尽くせない絶望感を知っている。
“この戦慄”を、僕は経験したことがある。
同じだ。
あの時と、同じだ。
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
狂牛が咆哮した。
押し寄せるのは洒落にならない威圧とド迫力。対峙する者の戦意を簡単に挫く大音塊。
恐怖の津波に僕とリリは体を仰け反らせる。
そして、アイツは鮮血に染まった銀の剣を見せつけ、一歩、地面を踏みつけた。
「にっ、逃げましょう、ベル様!? 今のリリ達では太刀打ちできませんっ!? 早くここからっ……ベル、様?」
視線が動かせない。
足も動かない。
あの赤黒い化物に射竦められ、僕の行動は奪われた。
ひょっとしたらそれは放棄に近かったのかもしれない。
小さい頃、祖父がよく作って楽しませてくれた、英雄をモチーフにした案山子……今の僕は、まさにそれだった。
「ベル様!? ベル様ぁ!」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
怖い。
あのモンスターが、滅茶苦茶、恐い。
眦に涙が浮かぶ。肺がしゃくり上げかけている。歯が噛み合わない。顔色は、もうどんな色になっているのか見当もつかなかった。
蹄を持つ二本の足が地面の草花を踏みにじる度、自分のことと重なって見える。
溜め込まれてきていた恐怖の象徴が、僕の身体の中で一気に膨れ上がった。
「ヌゥヴゥァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ミノタウロスが弾丸になった。
恐ろしい速度でルームの真ん中を突っ切り、僕との間合いを喰らいつくす。
武器も抜けない。何もできない。
終わりだ。
あっという間に眼前に迫った巨牛が、その大剣を袈裟に振り下ろした。
「――ぁ!?」
「え?」
転がる視界の中、か細い悲鳴が僕の耳朶を打った。
生きているという認識より先に、僕のお腹に被さっているリリの温もりを認めた。
その頭から止めどなく流れる、大量の血液も。
「リ、リリ……?」
僕は地面に投げ出されていた。恐らく、リリの体当たりによって。
横合いから突き飛ばされたおかげで、僕はミノタウロスの攻撃をやり過ごすことができて、代わりに、リリは怪我をした。
大剣が掠った? いや、ミノタウロスの砕いてみせた硬い岩盤が、リリの頭を直撃した?
渾身の一撃を被った床は見事に破砕していた。雑草ごと硬質な土くれが捲れあがっている。
リリは顔を歪め、小さく呻いた。
かあぁっ、と全身が赤熱する。
「ヴオオオオオオオオオオオオッ!」
「ッッ!!」
腑抜けきっている筋肉へ強引に力をこめる。立ち上がった。
怖い。一向に怖い。ひたすら怖い。
目の前で吠えるミノタウロスが怖くてたまらない。
でも、この子を死なせるのは――もっと怖いっ!!
「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「ごめん!」と心の中で謝りながら、リリの体を思いきり横へ投げた。
小さな体がどうなったか見届けることもせず、巨躯を翻してきたミノタウロスに僕は真正面から相対する。
震える唇に歯を突き立て、噛み千切る。振りかぶられた大剣が僕を殺すより早く、もはや反射的に右腕を突き出し、叫んだ。
「――ファイアボルトォオオオオオオオオオオオッ!?」
「ブゥオッ!?」
緋色の雷がミノタウロスの肉薄をはね返す。
炎の花弁を咲かせた【ファイアボルト】の威力に押され、あの猛牛が、後退した。
僕の見開かれた瞳が、勝機には程遠い淡い希望を宿す。
僕は取りつかれたように魔法を使い始めた。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
撃つ。撃つ。撃つ。
闇雲に剣を振るうかのように魔法を行使し続ける。
鋭い炎の矛が相手の巨体を何度も刺し貫き、炸裂。爆発音とともに猛火が荒ぶる。
苦悶の声をあげるミノタウロスはずるずると後ずさり、連鎖する爆炎の中に消えていく。
僕は魔法に縋った。
あの時にはないこの力なら、と一縷の望みに願い乞うように、【ファイアボルト】を乱射する。
僕は、心の中で魔法の引鉄を引き続けた。
「はぁ、はっ……!」
正気に戻って魔法を中断すると、視界は黒い煙に埋めつくされていた。
土と草木が燃えたような焦げくさい臭いが鼻腔を刺激する。ミノタウロスの形も見えない。
――やっ、た?
何の反応もなく炎の残滓が舞っている空間を前に、僕は突き出していた右腕を下げかけた。
「ンヴゥッ」
「――」
フォンッ、という風の切る音が鼓膜を殴った。
黒煙が揺らめきを作り、その中から巨腕が突如として伸びてくる。
下からアーチを描く岩のような拳は、僕の腹に吸い込まれるようにして収まった。
蹄が鎧を噛んだ感触。
衝撃が爆ぜた。
「がっっ!?」
視界の振動。体の中の空気が引きずり出され、状況を把握しきれないまま後方へ飛ぶ。
一つだけわかったことは、僕はリューさんに助けられたということ。
咄嗟に後ろへ飛ぶことで、その殴打の威力を半減させた。
しかし勿論衝撃の全ては殺し切れない。棒立ちになっていれば間違いなく腹を爆発させていた一撃だ、僕は決河の勢いで吹き飛んで、そしてダンジョンの壁に叩きつけられた。
「~~~~~~~~~~~~っ?! ……ぁ、ぎ!?」
壁面が破れる。半ば壁の中に埋まるような格好で、僕は降りかかる痛みの渦に悶え苦しんだ。
声にもならない。壁の一部が音をたてて崩れ、地面に尻をついている僕に石欠が雨あられと注ぐ。
真芯に捉えられた軽装は、壊れた。文字通り。
叩きつけられた背中部分がどうやら破損したようで、一気に脱落した。支えを失った鎧はあっという間にバラバラとなる。
どこまで派手に飛ばせば、気が済むんだよっ……!?
上半身をボロボロになったインナー一枚にしながら、僕は震える足でなんとか立ち上がった。
「フゥウウウウウウウウッ……!」
「……!!」
顔面の筋肉が、引き攣った。
ダメージ無し。
あれだけの【ファイアボルト】が被弾してもなお、ミノタウロスは五体満足、目立った外傷は存在しなかった。
僕の魔法は厚い体皮に火傷を負わせただけで、致命傷すら与えていない。
歯が、立たない。
茫然自失する僕を見据え、片角を失ったミノタウロスは天を仰いで喉を震わせる。
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
これが、“冒険”。
冒険者ベル・クラネルが犯す、初めての“冒険”。
――勝てない。
雄々しく空に向かって雄叫びをあげる狂牛は、絶望にしか見えなかった。
【ベル・クラネル】
所属:【ヘスティア・ファミリア】
ホーム:下水道の隠し部屋
種族:ヒューマン
ジョブ:冒険者
・到達階層:10階層
・武器:短刀 短剣
・《神様のナイフ》
・《短刀》
所持金:69500ヴァリス
【ステイタス】
Lv.0
力:S 82 耐久:S 0 器用:S 88 敏捷:SS 3 魔力:B 51
≪魔法≫
【ファイアボルト】
・速攻魔法
≪スキル≫
【憧憬一途】
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
短刀:S 37
短剣:C 14
【装備】
≪シュワイザーデーゲン≫
・バゼラード。短剣。
・『ノームの万屋』にて飾られてあったもの。19000ヴァリス。
・実は結構な業物。駆け出しの冒険者には十分過ぎるほどの武器。
・素直になれなかったパルゥムがベルへせめての事に置き土産として奮発。当然値切った。ジジイ涙目。
・ちなみに万屋の店主の名前は『ボム・コーンウォール』。